「歳はとりたくない」と願う万人にとって大変魅力的な言葉ではありますが、今のところ言葉が先行し「アンチエイジングとはなにか?」という議論がなされていないように思います。
治療においても「一般治療とアンチエイジングの違い」に大きな認識の差があります。
たとえば美容の世界では、レーザーや注入、手術による若返りを「アンチエイジング」としている場合があります。
しかし、それを「アンチエイジング」と呼ぶならば、白内障に行う眼内レンズ手術や関節痛に対する人工関節手術、心筋梗塞のバイパス手術も「アンチエイジング」ということになってしまいます。
加齢変化に対応する治療として
・ どこまでをアンチエイジングとし、どこから対症療法とするのか?
・ アンチエイジング=予防医療なのか?
・ エイジングをコントロールする治療はどこまでを言うのか?
言葉が氾濫する中、このような問題に対しても真剣に考えてゆく必要があると思うのです。
私は治療者の一人として「エイジング治療:エイジマネージメント」というものを以下のように考えています。
人の身体は「破壊と再生」を繰り返していますが、加齢変化の1つの要因として「再生能力の低下」があります。であれば、アンチエイジングの重要なテーマとして「再生能力・自己治癒能力の回復」が挙げられるべきだと思うのです。
私は、治療というものを
・ 予防レベル:過剰な老化スピードを遅らせる=予防的アンチエイジング
・ 自己修復レベル:自己治癒能力を引き出す=再生的アンチエイジング
・ 外部修復レベル:自己治癒不能なものに対し医療が治す=
対症療法的アンチエイジングというレベルに分けています。
これらのうち「どこまでをアンチエイジングと呼ぶべきか?」はとても難しい問題ですが、私は「予防レベルと自己修復レベル」に絞って治療を行っています。
例:皮膚
・ 皮膚を構成する細胞への予防=予防的アンチエイジング(行う)
・ 真皮の再生能力回復=再生的アンチエイジング(行う)
・ しわに対する手術、コラーゲン注入=対症療法的アンチエイジング
(行わない)
私は「アンチエイジング=細胞レベルの機能回復」であると考えています。全身のあらゆる加齢変化は、細胞が機能低下を起こすことによる「破壊・修復バランスの崩れ」である以上、細胞機能を高めてさえやれば、そのアンバランスは回復させることができると考えられます。
細胞レベルの機能を回復するためには
・ 必要かつ十分な栄養素の補給(細胞レベルでの)
・ 内外毒素の除去(活性酸素や重金属、化学物質、炎症性物質など)
・ 命令伝達の改善(ホルモンレベル、神経伝達レベルの改善)
・ 免疫力の回復
という要素が重要です。
これらを全身的に行うわけですが、目的の臓器に集中的に行うことも可能です。
私が考えるアンチエイジング治療において忘れてはいけないこと、それは「自然な物質のみを使う」ということです。
アンチエイジングは「対症療法ではない」という定義で治療を行っていますので、人の身体が本来必要としていない物質を使用しないということも重要だと考えています。
ビタミンやミネラル、アミノ酸、脂肪酸などに加え、ホルモンであっても「人体が作り出している形のホルモン」を使うことが大切だと考えています。
これらは「私個人のルール」です。
加齢変化というものに対し、どこまでの治療を行うか?どこまでの治療を望むかはその人その人の価値観や定義によるものです。
同じ医師であっても、自身の治療を「どこまでをエイジング治療とするか?」はまったく違います。
病気の治療ではありませんので、皆さんが治療を受けるときに「私はこの考え方に賛同できる」という治療を受けるようにすることが大切になってくるのです。それは皆さんの「どういう人生を歩みたいか」にもかかわる部分でもあります。
じっくりと考え、納得した上でお受けになるようにすべきでしょう。
辻クリニック院長(東京・麹町)。
真のアンチエイジングとは「若い頃の戻る」のではなく「アクティブエイジング:美しく歳を重ねること。年輪の美しさを追求すること」であると思い、日々診療しています。整形外科医としてマイクロサージェリー、スポーツ整形外科時代を過ごし、スポーツ選手におけるエイジング「選手寿命の延長」に取り組む。
スポーツ選手におけるエイジングをコントロールするためには「栄養学:分子栄養学」「運動力学」「ホルモン・神経伝達機能」「メンタリティー」「細胞医学」を複合的にコントロールする必要があります。この理論を「一般人」に取り入れることによって、エイジングを「総合医療」として捕らえる試みを行う。